AGA(男性型脱毛症)の治療において、患者様から最も多く寄せられる質問の一つが、「何歳から治療を始めるべきですか?」というものです。皮膚科医としての私の答えは、原則として「気になった時が始め時であり、早ければ早いほど良い」です。しかし、年齢によって治療の目的や最適なアプローチは少しずつ異なります。まず、10代後半から20代の若年層で治療を開始する場合。この年代の治療の最大のメリットは、毛根の細胞(毛母細胞)がまだ活発であるため、治療効果が出やすいという点です。進行を早期に食い止めることで、その後の人生を長く豊かな毛髪状態で過ごせる可能性が高まります。この時期は、まずフィナステリドなどの内服薬で進行を止める「守りの治療」を基本とし、生活習慣の改善を併せて指導することが多いです。焦って強力な治療をするよりも、まずは土台を固めることが重要です。次に、30代から40代。この年代は、薄毛が顕在化し、ご本人の悩みも深くなる時期です。治療の目的は、進行を止めることと、可能であれば失われた毛量を取り戻すことの両方になります。そのため、フィナステリドによる「守り」に加えて、ミノキシジルによる「攻め」の治療を組み合わせる併用療法が最も効果的な選択肢となります。この年代での積極的な治療が、50代以降の見た目を大きく左右します。そして、50代以降で治療を開始する場合。この年代では、AGAに加えて加齢による毛髪全体の衰えも考慮する必要があります。治療の目的は、劇的な発毛よりも、現状を維持し、髪にハリやコシを与えてQOL(生活の質)を向上させることに主眼が置かれます。治療薬の効果も期待できますが、若い頃ほどの反応は得にくい場合もあります。そのため、ご本人がどこまでを望むのか、というゴール設定を丁寧に行い、現実的な治療計画を立てることが不可欠です。どの年齢であっても、様子を見ている間にAGAは進行します。迷っている時間こそが、最ももったいないのです。まずは専門医に相談し、自分の現在地と、年齢に応じた最適な治療法を知ることが、後悔のない選択への第一歩です。
皮膚科医が語る年齢別AGA治療の最適解!早く始めるべきか、様子を見るべきか