ネトル茶が薄毛対策として注目される背景には、含有される成分が髪の健康や成長サイクルに多角的にアプローチする可能性が示唆されているからです。その科学的な仕組みを紐解くと、主に「栄養補給」と「原因物質への働きかけ」という二つの側面が見えてきます。まず、「栄養補給」の側面です。髪の毛はケラチンというタンパク質から構成されていますが、その生成にはビタミンやミネラルが不可欠です。ネトルには、髪の主成分であるケラチンの生成を助けるミネラル、ケイ素(シリカ)が豊富に含まれています。ケイ素は、コラーゲンの生成をサポートし、髪にハリやコシを与える役割を担います。また、血行促進に関わる鉄分や、細胞分裂を正常に保つ亜鉛も含まれており、これらの栄養素が毛母細胞までしっかりと届けられることで、健康な髪が育つための土壌が整えられます。次に、「原因物質への働きかけ」という側面です。男性型脱毛症(AGA)の多くは、男性ホルモンのテストステロンが5αリダクターゼという酵素によって、より強力なジヒドロテストステロン(DHT)に変換されることで引き起こされます。このDHTが毛乳頭細胞の受容体と結合し、髪の成長を阻害する信号を出すのです。ネトル、特にその根には、植物ステロールの一種であるβ-シトステロールが含まれており、この成分が5αリダクターゼの働きを阻害するのではないかという研究報告があります。つまり、DHTの生成自体を穏やかにすることで、ヘアサイクルの乱れを防ぎ、抜け毛を抑制する効果が期待されているのです。これらの作用は、医薬品のように直接的で強力なものではありませんが、体の内側からバランスを整えるという観点において、薄毛に悩む人々にとって魅力的な選択肢となっているのです。