シャンプー後の排水溝に溜まる髪の毛、朝起きた時の枕元の抜け毛。日々の抜け毛を目にするたびに、不安を感じる方は少なくないでしょう。「これは自然な現象なのか、それとも病院へ行くべき異常事態なのか」。その判断に迷う時、いくつかの客観的な基準を知っておくことが、適切な行動への第一歩となります。まず、最も分かりやすい目安は「抜け毛の本数」です。健康な人でも、ヘアサイクルの関係で一日に50本から100本程度の髪は自然に抜け落ちています。しかし、毎日明らかに200本を超えるような状態が2週間以上続く場合は、何らかの異常が起きている可能性があり、専門医への相談を検討すべきサインと言えます。特に、シャンプー時だけで100本以上抜ける日が続く場合は、注意が必要です。ただし、本数だけに囚われるのは早計です。次に重要なのが「抜け毛の質とパターン」です。抜けた髪の毛が、太く健康な毛だけでなく、全体的に細く弱々しくなっていたり、短い産毛のような毛が多かったりする場合、それはヘアサイクルが乱れ、髪が十分に成長する前に抜け落ちてしまっている証拠です。これは、AGA(男性型脱毛症)の典型的な兆候です。また、前頭部の生え際や頭頂部といった、特定の部位から選択的に抜け毛が進行している場合も、AGAの可能性が非常に高いです。さらに、「頭皮の状態」も重要な判断材料となります。抜け毛と同時に、我慢できないほどの強いかゆみ、大量のフケ、頭皮の赤みや湿疹、痛みなどを伴う場合は、脂漏性皮膚炎などの皮膚疾患が原因である可能性が高いです。これらの症状は、放置すると頭皮環境を悪化させ、さらなる抜け毛を引き起こします。そして、ある日突然、コイン大の脱毛斑が現れる「円形脱毛症」の場合は、迷わずすぐに皮膚科を受診してください。これらのチェックポイントに一つでも当てはまる場合は、一人で悩まず、勇気を出して病院のドアを叩きましょう。早期の受診が、あなたの髪と心の健康を守るための、最も確実な一手となるのです。