AGA治療を開始するすべての人々が、同じスタートラインに立っているわけではありません。治療効果がどれくらいの速さで現れるかは、治療を開始した時点での薄毛の「進行度」に大きく左右される、という厳然たる事実があります。この相関関係を理解することは、治療に対する現実的な期待値を持ち、長期的な視点で取り組むために非常に重要です。薄毛の進行度を客観的に示す指標として、医療現場では「ハミルトン・ノーウッド分類」が広く用いられています。これは、生え際の後退や頭頂部の薄毛のパターンによって、症状をⅠ型からⅦ型までのステージに分類するものです。このステージが、治療効果の速さを予測する上での一つの目安となります。例えば、ステージがまだ初期の段階、つまりⅠ型からⅢ型 vertex(頭頂部も少し薄くなってきた段階)あたりで治療を開始した場合、効果は比較的早く現れる傾向があります。このステージでは、多くの毛根で毛母細胞がまだ活力を失っておらず、休眠状態にあるか、少し弱っている程度です。そのため、フィナステリドやデュタステリドといった治療薬でAGAの原因であるDHTの攻撃が止まると、毛母細胞は速やかに元気を取り戻し、細くなった産毛を再び太く長い髪へと成長させ始めることができます。いわば、少し弱った選手に栄養と休息を与えれば、すぐに戦線に復帰できるようなものです。一方で、ステージがかなり進行した段階、例えばⅤ型からⅦ型になると、治療効果を実感するまでには、より長い時間が必要となります。このステージでは、長年にわたってDHTの攻撃を受け続けた結果、毛母細胞が深い休眠状態に陥っているか、あるいは完全に活動を停止し、死滅してしまっている毛根の割合が高くなっています。産毛すら生えていない領域が広がっている場合、その部分に再び髪を生やすのは、薬の力だけでは非常に困難です。もちろん、残っている毛根を活性化させ、現状維持やある程度の改善を目指すことは可能ですが、初期段階に比べて、目に見える変化が現れるまでの道のりは長くなることを覚悟しなければなりません。「手遅れ」という状態に近づけば近づくほど、治療の難易度は上がっていくのです。この事実が示唆する結論は、ただ一つです。「気になった時が、始め時」。AGA治療において、早期発見・早期治療に勝る特効薬はないのです。
AGAの進行度と治療効果の速さの相関関係