潔さが僕のスタイルだと語る彼の哲学
都心にアトリエを構えるファッションデザイナーの彼と会うと、いつもそのミニマルなスタイルに目を奪われる。滑らかに磨き上げられたスキンヘッドに、フレームの美しい黒縁メガネ。仕立ての良いジャケットをラフに着こなす姿は、彼自身のブランドが持つ哲学そのものを体現しているようだった。「髪があった頃は、むしろ今の自分よりずっと老けて見えたんじゃないかな」と彼は笑う。若くして薄毛が進行し始めた当初は、彼もまた多くの男性と同じように、スタイリング剤で必死に隠そうとしていた時期があったという。「でもある日、鏡を見て気づいたんだ。僕がやっていることは、デザインの本質と真逆じゃないかってね。僕のデザインは、不要なものを削ぎ落とし、素材の良さを最大限に引き出すことを信条としている。なのに、自分の頭では余計なもので何かを誤魔化そうとしていた。その矛盾に気づいた瞬間、全てが馬鹿らしくなったんだ」。その足で理髪店へ向かい、彼は全てを剃り落とした。それは彼にとって、コンプレックスからの解放であると同時に、自身のデザイン哲学と人生を一致させるための儀式でもあった。「頭がすっきりしたら、思考もクリアになった。僕にとってこのスタイルは、単なる髪型じゃない。潔く、本質を見極め、自分に嘘をつかないという生き方の表明なんだよ」。彼は、薄毛を個性として活かすには、他の部分でバランスを取ることが重要だとも語る。上質な素材の服を選ぶこと、姿勢を正すこと、そして何より、自分の仕事や生き方に誇りを持つこと。彼の言葉の端々からは、外見の変化を内面の成長へと繋げた人間の、揺るぎない自信が感じられた。