僕にとって、鏡は長年の敵だった。日に日に後退していく生え際、薄くなっていく頭頂部。それを映し出す鏡を見るたびに、ため息と自己嫌悪が胸に渦巻いた。帽子は外出時の必需品となり、人の視線が常に頭に集まっているような気がして、自信を失っていく一方だった。そんなある週末、僕は半ば自暴自棄な気持ちで、バリカンを手に取った。どうせ失うものなら、自分から捨ててやろう。そんな思いだった。ウィーンという無機質な音とともに、わずかに残っていた髪がらはらはらと落ちていく。全ての髪を剃り落とし、恐る恐る鏡を見た瞬間、僕は言葉を失った。そこにいたのは、今まで見たことのない、知らない男だった。しかし、不思議と嫌な感じはしなかった。むしろ、何かから解放されたような、清々しい気持ちが込み上げてきたのだ。翌日、僕は初めて帽子を被らずに街を歩いた。人の視線は確かに感じる。だが、それは以前感じていたような憐れみや好奇のものではなく、どこか堂々とした僕の姿への純粋な興味のように思えた。友人に会うと「そっちの方が断然かっこいいじゃん!」と驚かれた。その一言が、僕の中で固く閉ざされていた扉をこじ開けた。隠すことをやめた瞬間、僕は自由になった。今では、スキンヘッドは僕のトレードマークだ。ファッションを楽しみ、人と目を合わせて話し、何事にも前向きに取り組めるようになった。鏡の中の男は、もはや敵ではない。コンプレックスを最強の武器に変えた、僕の最高の親友だ。