私は薄毛治療を専門とするクリニックの医師としてこれまで何千人もの患者様の頭皮と向き合ってきましたが治療において投薬や施術と同じくらい私が口酸っぱく指導しているのが日々の睡眠の改善であり睡眠不足と薄毛には切っても切れない深い関係性があることを医学的な見地からお話ししたいと思います。クリニックを訪れる患者様の多くは高価な育毛剤を使っても効果が出ないあるいは急に抜け毛が増えたという悩みを抱えていらっしゃいますがカウンセリングを通して生活習慣を詳しくお聞きするとその九割以上の方が慢性的な睡眠不足や睡眠の質の低下に陥っているという共通点があります。私たちの髪の毛は毛包という器官にある毛母細胞が細胞分裂を繰り返すことで作られますがこの分裂を指令しているのが毛乳頭細胞であり毛乳頭細胞は血液から酸素と栄養を受け取って活動しています。人間が睡眠をとっている間特に深いノンレム睡眠の時には副交感神経が優位になり全身の筋肉が弛緩して血管が拡張するため頭皮の隅々の毛細血管にまで血液が行き渡り毛母細胞にたっぷりと栄養が届けられます。さらにこの時に脳下垂体から成長ホルモンが大量に分泌され毛母細胞の増殖と分化を強力に促進するため髪の毛は夜寝ている間に最も作られ育つことになります。逆に睡眠不足が続くと交感神経が優位な緊張状態が続くため血管が収縮し頭皮は酸欠と栄養不足に陥りさらに成長ホルモンの分泌も阻害されるため髪の毛を作る工場が完全にストップしてしまいます。また睡眠不足はホルモンバランスにも悪影響を及ぼし男性の場合は男性ホルモンのテストステロンが薄毛の原因となるジヒドロテストステロンに変換されやすくなるとも言われており女性の場合も髪の成長を助けるエストロゲンの分泌が乱れ薄毛を進行させる要因となります。加えて睡眠不足によるストレスは体内の活性酸素を増加させ頭皮の細胞を酸化させて老化を早めるため健康な髪が育つ土壌そのものを破壊してしまうのです。したがってどんなに最先端の薄毛治療薬を処方しても土台となる体の機能が睡眠不足によって低下していれば薬の成分が毛根に届かず十分な効果を発揮することはできません。私は患者様に対して一日七時間の睡眠を確保することそして毎日同じ時間に起床し朝日を浴びて体内時計をリセットすることを強く推奨しておりこれだけでも抜け毛が減り髪にハリやコシが戻ってくるケースを数え切れないほど見てきました。薄毛治療は薬を飲めば治るという単純なものではなく食事運動そして何よりも良質な睡眠という生活習慣の改善があって初めて成功する包括的な医療であり睡眠を制する者が薄毛治療を制すると言っても過言ではないのです。