多くの人が薄毛の悩みを抱える中で頭皮の異常なベタつきや大きめのフケを伴う脱毛症状に直面した場合にまず疑うべきは単なる男性型脱毛症ではなく脂漏性皮膚炎が進行して起こる脱毛症である可能性が高いという事実です。この疾患の根本的なメカニズムを理解することは適切な治療への第一歩であり、その中心には私たちの皮膚に常在しているマラセチアという真菌いわゆるカビの一種が深く関与しています。通常この菌は皮脂を餌として活動していますが健康な状態であれば無害な存在であるものの、ホルモンバランスの乱れや食生活の偏りによって皮脂が過剰に分泌されるとそれを餌とするマラセチア菌が爆発的に増殖を開始します。問題なのはこの菌が皮脂を分解する過程で遊離脂肪酸という物質を排出し、これが皮膚に対して強い刺激を与えて炎症を引き起こすことであり、頭皮が赤くなり痒みを伴い最終的には毛根がダメージを受けて髪が抜け落ちてしまうのです。一般的なAGA治療薬であるフィナステリドなどはホルモンに作用するものですが、この脱毛症の場合は原因が炎症と真菌にあるためアプローチが全く異なり、まずは抗真菌薬を用いて菌の数をコントロールし同時にステロイド外用薬などで炎症を鎮めることが最優先事項となります。またこの症状の特徴として頭皮だけでなく顔のTゾーンや耳の裏など皮脂分泌の多い場所にも湿疹が現れることが多く、これらが同時に起きている場合は自己判断で市販の育毛剤を使用することは火に油を注ぐ結果になりかねません。皮膚科学的な観点から見ればこれは立派な皮膚疾患であり、毛髪の成長サイクルが乱されている原因は毛根そのものの寿命ではなく土壌である頭皮環境の悪化にあるため、早期に皮膚科を受診し適切な薬物療法を行えば改善する見込みは十分にあります。しかし放置すれば毛母細胞が修復不可能なダメージを受け恒久的な薄毛につながるリスクもあるため、毎日の鏡でのチェックで頭皮の赤みや独特の湿ったフケに気づいた段階で即座に行動を起こすことが、大切な髪を守るための分岐点となるのです。